興行の買い値は企業秘密ですから言えませんよ。色々オプションがあったり、レスラーのタマで変わってきますからね。定価はあってないようなものです。これまでの付き合いや実績でも変わってくるからね。アゴ(食事)アシ(交通費)マクラ(宿)込みが一般的だけどこれも例外がありますよ。よく言われたのが完売満員だから大入り袋(ボーナス)出せと要求する強気の団体もありましたね。それとマクラというのは我々では別の意味で使いますがね(笑)。
やはり人気のある外人が参加するかどうかが最大のポイントでしょう。私が扱ったベスト3はタイガー・ジェット・シン、フレッド・ブラッシー、ヘイスタック・カルホーンでしょうかね。暮れのタッグ戦はドル箱だったね。年代はバラバラだけど、たんまり儲けさせてもらいました。勿論、大入り袋を出しましたし、芸者を上げてのドンチャン騒ぎ。その後の「マクラ」も付けてね(笑)。
次に重要なのは対戦カードですかね。田舎のドサ回りは力道山、馬場、猪木といったエースは6人タッグマッチというのが相場です。はっきり言ってドサ回りは顔見せ興行、アソビみたいなものでしょうしね。勿論、大都市のタイトル戦は自主興行でオイシイところを持って行ってしまうんで、客が満員の時は良いのですが、段々と不入りが続くと我々(興行主)から不平不満が募っていったわけです。6人タッグだとエース選手の休憩時間が長いので正味のファイト時間は5分程度ですからね。もう少しマジメに演じろ!ってハッパをかけたこともあります。
それでも昔は客は大喜びでした。スター選手の顔を見られるだけで満足でしたから。無論、今では通用しませんがね。そんなショーの形態でしたから年間200試合、全国津々浦々巡業ができた理由ですね。前座からメイン・イベントまでそれぞれが華のある選手がいて、パッケージとしての完成された興行の楽しさがありました。
今はどうですか? 乱立の結果、選手層は貧弱で試合内容もキャラがないからどれも似たりよったり。客は飽きてしまうんですよ。前座の1試合目からメイン・イベントまで見せ技大技の連発ですから。そうゆう試合内容だとメリハリが無く誰が強いのか分かり辛いわけです。だから平坦な印象しかなく、つまらないから次に来た時は二度と見に来てくれません。その結果が今の不人気の原因じゃないんですか?
昔からニッパチ(2月8月)は興行に不向きと言われています。2月は寒くて屋外に出ない、8月はお盆で人がいないということですが、田舎だとお盆に人が増えるわけですから好都合です。2月の寒さは各団体も考えて南の方で興行日程を組むわけです。2月の北海道シリーズなんてありましたか?曜日は土日がベストですが週休2日の影響で金も良くなりました。その地区の特別行事とは重ならないように気をつけていますよ。
後、問題だったのが当日のテレビ中継が有るか無いかです。生中継が有るとテレビの桟敷で見ようと会場に足を運ばない客がいるんですね。大都市のタイトルマッチ戦は別の話であくまで田舎のドサ回りだからですよ。対戦カードはタイトルマッチの前哨戦の意味あいがありますから、外人選手の強さをテレビでPRする筋書きが多いわけです。
つまり、日本人スターの強いシーンは余り見れないわけです。良いカッコをする役は外人なんですよ。だから日本人が勝っても反則勝ちや負け役レスラーをあっさりフォールして終わりというシナリオしかありませんから、客は欲求不満を覚えるわけです。そんな試合にカネ出して見たくないっていう心理ですよ。だからテレビ放送のある興行は売値を値引き交渉します。
それにテレビがあると20時50分には全ての試合が終わるということも知ってましたから、みんな時計を見ながら観戦するわけです。公民館や体育館の使用時間も決められていますから、そこから試合時間を逆算しますからレスラーはやりにくかったと思います。試合中にリングアナが途中経過の時間をアナウンスしだしたのは、レスラーとレフリーに教える隠語みたいなもんです。
中にはTVディレクターが紙に残り時間を(カンペ=カンニングペーパー)書いて教えたという都市伝説がありますが、私は知りません(笑)。毎週20時50分に終わるのは八百長の証拠だという視聴者からの抗議も来たようで、それからは時々、逆に生中継内では終わらないように、「逆ヤラセ」いや演出が取り入れられたようですよ(笑)。
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