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八百長ショーのプロレスに恐怖のセメント試合が生まれる背景①

疑似格闘技ショーのエンターテイメントがプロレスの正体である。勝敗はレスラーの実力の結果ではなく、興行の便宜上、全試合を時間切れ引き分けにするというわけにもいかずに存在するだけで、いわばオマケのようなものである。勝つことが意味をなさない世界である以上、八百長も存在し得ない世界である。

その八百長ショーであるプロレスにガチンコのセメント試合が存在するとは、一体どういうことかと疑問や不思議に思う声もあるようである。確かにシナリオ無しやシナリオ破りの死と隣り合わせの恐怖が牙を顕わにする普段見る予定調和の欠伸試合とは全く異質の「デスマッチ」が存在する。そうしたレスラーですら小便をチビるシナリオ無しの殺人試合が遂行される時には必ず泥沼の欲に絡んだ人間の生臭い妬み嫉みの背景が隠されていたのである。

スポーツ勝負世界、個人格闘技として一番身近な例としてここでは相撲、ボクシングを取り上げるが、その格闘技世界では厳格な序列・ランキングが横綱・世界チャンピオンを頂点に勝敗の実力によってランクが組まれている。勝つことで地位も名声も富も手に入れることができる世界だ。

先日行われた世界バンタム級タイトルマッチの亀田興毅vsのダニエル・ディアス(ニカラグア)戦は酷い試合であったが、八百長と文句を垂れるファンもマスコミもいなかった。亀田より完全なる格下(同級14位)で一年余りの実戦から遠ざかるブランクがあり、誰が見ても亀田が勝てる相手をみつけてきたマッチメイクの勝利だろうが、それでも100%の勝利が事前に約束された出来レースではなかった。それではイコール八百長試合である。だが99%の勝ち予測はできても1%の不安が残るのが今回の亀田戦、スポーツ格闘技勝負の世界である。

プロレスはガチンコの強さがイコールチャンピオンではない。弱い人間でも興行的価値の高い選手がチャンピオンに成れる世界である。この勝ち負けに拘る人間の性がこれまでのプロレス独立騒動の根底に流れる負の面妖の塊である。ドロドロの妬み嫉みが渦巻き、実力も無い(弱い)のにチャンピオンの座に着き、カネも手に入る…この反撥感情が嫉妬と混ざり合い絡み合っているのがプロレス村である。

実力で王座交代が成されない世界がエンターテイメント・似非格闘技ショーの負の部分である。なまじ格闘技という見せ掛けの衣装を纏っているばかりに若いファンの中には、実力で王座交代や強者が王座に就くものだと未だに誤解や勘違いを生んでしまっている。いやレスラーの中にもなまじ実力があるばかりに負け役を演じることに不満を覚える役者として失格・落第な選手もいる。素人のファンが騙されるのは詮のないことかもしれない。これは不幸なことである。臭い物にはフタをして隠蔽する体質がプロレス界には残されているわけだ。

実力でトップに就くことが出来ぬ時、馬場・猪木の確執に代表される過去の歴史が示す通り、レスラーが選ぶ道は策略・謀略を図りクーデターを起こし引きずり降ろすか、別天地に亡命し自分がお山の大将に収まるという定番の図式がある。この流れは正に一国の流れの相似形でもある。ゆえにプロレスは人生の縮図と称されるのであろう。

自分で団体を作りお山の大将に君臨すれば、自由自在、好きなように運営ができる。興行の柱となるインチキな冠タイトルを作りそのチャンピオンに収まる。悲願であったエースの座も掌中に入れ、ギャラ配分も思いのまま。子飼いレスラーたちの配役を考え、シナリオ作成も自分の好きな筋書き通りに組み立て進行できる。

ベロを出して失神したように装い幹部レスラーやレフリーにも筋書きを教えず騙し、自分はタンカで運ばれるという三流劇画顔負けのストーリー展開も可能だ。マッチメーカーとして見せ技の凄さや強さを、より劇的に印象付ける演出も対戦の外人選手にボーナス手当を奮発すれば筋書き通りに演じるのがレスラーの仕事・役割である。必殺技・得意技・看板技はこうして相手レスラーとの協力・信頼関係の上で生まれる寸法だ。

アームブレーカー攻撃で腕が折れたような苦悶の表情や態度を演じるように指示し、翌日からギプスを巻いた姿をファンの前で見せればこの芝居は完璧であろう。このストーリー展開なら嫌が応でも次の興行ではリベンジ・復讐戦だと盛り上がる。チラシ屋の御用聞き達がここぞとばかりにPRヨイショ記事で全面協力。どんな復讐戦になるか? 「足の骨を折ってやる!」とでもリップサービスすればファンは大喜びで会場に足を運ぶ…この丁々発止の循環サイクルこそがプロレス興行の流れの原形であり図式である。

だが誰もが負け役に嫌気がさし、お山の大将に就くばかりで団体の乱立と混乱を招き、お手盛りチャンピオンの粗製乱造で魅力も興味も半減、派手で子ども受けする大技見せ技連発の田舎のサーカス的レベル内容は三流サル芝居と変わらず、目の肥えたファンは愛想を尽かし離れていった。それが今のプロレス界の沈滞に連綿と続く連鎖の現れであろう。

一人のボス猿の回りには隷属の手下猿しかいない。敵対する猿軍団がいないワンマン王国…その状況下ではセメント試合は発生しない。一方、各派閥が割拠し鉄砲玉を配下に抱え相手の首を隙あらば掻き切ろうと権謀術数の詭計を張り巡らし、魑魅魍魎、百鬼夜行のくせ者たちが奸計策謀を水面下で企み、熾烈な火花を散らしていた日本プロレス時代…であればこそ、シナリオ破り・シナリオ無視のセメント試合が行われる条件が揃っていたのであった―。
(この稿、続く)




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ジャンル : スポーツ

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紹介文:門茂男主宰のユニオン元会員で、同氏には長年に渡りご交誼を賜った。ライフワークであった「ザ・プロレス365」の未発表を含む取材メモを見せて頂き、その要点を再構成した「門茂男メモ」と数名のプロレス記者から入手した情報をベースに記した昭和プロレスのテーマに迫ります。
ミスター高橋の「流血~」本で白日の下に暴かれたプロレスの実像ですが、単なる暴露もので終わるのではなく、門氏が追及したレスラーの人間性にまで同じように迫りたいという思いです。

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シンタロー

Author:シンタロー
プロレスのテレビ初観戦は小学生前の幼少期に祖父宅で見た力道山プロレス。その当時、一番印象に残っている試合は降参しないと足が折れると技の恐ろしさを足4の字固めで教えてくれたザ・デストロイヤーや、吸血鬼を連想させる噛みつきで相手を出血させるレスラーの怖さを知らしめたフレッド・ブラッシーよりも、幼心にはコミカルな妙技で笑い転げたミゼット・レスラーとのタッグマッチであった。それは祖母が馳走してくれた三ツ矢サイダーの味と共に脳裏に刻まれている。放送日の詳しいことは不明だが、昭和35年8月にミゼット・レスラー(名前は不詳)初来日の記録がある。テレビ観戦がその時期のどの試合であったかは今となっては調べようもないのが残念である。
一般総合雑誌・書籍編集者として多数のプロレスや格闘技関係の企画立案に参画し、馬場、猪木、大山倍達、木村政彦を始め多くのレスラーや格闘家を取材。プロレス界のご意見番・門茂男氏とは編集ジャーナリストの大先輩として長年に渡り公私ともども御交誼を賜った。お会いする度に未整理、未発表の「ザ・プロレス365」のラフ原稿を見せて頂き、同時に門氏が口頭で語った様々なある事件の真相や噂(裏付けが未確認)を氏の了解を得てノートにまとめ「門メモ」として所有する元ユニオン会員。

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